本物の経営者の条件

仕事柄、色々な経営者とお会いし、お話しする機会が多いですが、

優秀な経営者としての必要な要素は何かと考えさせられる場面が多々あります。

上から目線のプライドが高い経営者、経営手法ばかりを語る経営者、

経営数字のみに固執する経営者、夢物語ばかりで現実を直視しない経営者、社員をモノとして扱う経営者。

人間が千差万別のように経営社のタイプも色々です。


私が考える本物の経営者は5つの要素を備える経営者だと思います。


1.過去の実績、現在の状況を素直に捉え、
  戦略の転換を勇気をもってできる。過去の成功体験にとらわれない。
  戦略ミスを素直に受け入れる



2.売上至上主義から利益重視主義に思想を変える。
  デフレ環境の中で売上のみを重視しないで、
  利益を確保する事を最重要に考える。


3.利益確保の為の経営改革施策を立案、実行する。
  営業戦略、営業構造の見直し、
  コスト競争に陥らない独自性製品の開発、変動費、固定費の低減。
  

4.私心の強い経営者ではなく、謙虚さをもつ経営者である。
  自分ではなく、人に助けてもらう思想を持つ。
  人の話を聞く、自分の考えを押し付けない。
  会社は自分のものではなく、従業員、株主、顧客、仕入先のものの認識が必要。


5.本物を見抜く力を身に付ける。
  適材を見抜き活用する、うわべの話にだまされない。



皆さんは本物の経営者の条件はどう思われますか?

日本のモノ造りについて

先日、製造業が元気になるモノ造りというセミナーで講演をしました。今日はその講演の要点を説明します。


セミナープログラムは下記①〜⑤の項目です。


①1980年から現在までの経営環境の変化と企業の戦略の変遷について
②現在の自動車、家電メーカーの業績について
③家電メーカの業績悪化要因について
④韓国の代表的メーカ、サムソン電子と中国メーカの経営分析
⑤グローバル展開の中で日本の製造業が復活する秘訣について


バブル崩壊前の企業の戦略は多角化バブル崩壊以降は選択と集中の戦略をとりましたが、テレビ事業に過度な集中戦略を取った家電メーカーの業績が軒並み悪くなっています。一方で、開発技術、生産技術等を日本から吸収し、グローバルな市場のマーケティングを実施、商品の企画に落し込み、設計開発・生産をしたサムソン電子はテレビ事業でも好調な業績を保っています。
集中戦略は誤りではないのですが、市場環境の変化に俊敏に対応した集中戦略と市場のニーズに適応した商品企画開発が必要です。
従来の日本の強みのモノ造りだけではなく、顧客にとって、価値がある商品をタイムリーに市場投入できる企画開発力を磨く事が必要と考えます。


その観点で日本の製造業が元気になる秘訣は


①市場をグローバルに捉え、環境変化に俊敏に適応した事業戦略の革新
②モノ造りを磨きながら価値造りへの変革
 差別化製品(顧客に取っての価値製品)企画力強化とITを活用したデジタルモノ造り
③グローバル人材の採用、育成
④日本の中だけでガラパコス化している組織の風土改革
です。

文字で伝える

今日は文書化の必要性についてブログを書きます

コンサルティングをしている現場で口頭伝承の文化をよく、感じるときがあります。会議の議事録をかかない、上司に口頭の報告で済ます。文章にする事が面倒なのか、なかなか文字にして表現しない場面を多々見ます。欧米の企業では様々な人種の社会の中でビジネスが進められる為に、相手に意志を伝達する手段として必ず紙に書く事が常識になっています。日本は単一民族の為、口頭でも意志伝達が容易な事が文章を書かない要因なのかもしれません。

文字にして表現する事のメリットを考えると
1.書く事により、頭の内容を整理する事ができる
2.記録として残る為、後で記憶に頼る必要が無い
3.情報を受信する側も口頭より文章のほうが内容を理解しやすい

われわれのコンサルティングの場面で、口頭による空中戦の議論より、板書をして議題を整理する事がよくあります。話の内容が複雑になればなるほど、板書をする事により議論の展開が非常にスムーズになります。聴覚だけではなく、視覚も使う方が思考回路がうまく働くのかもしれません。

皆さんも仕事の場面で、できるだけ、口頭のみを少なくして、文字で表現して相手に意志を伝える事を是非、実践してみてください。

経営を支援するツールとして

過去に、低コスト経営時代に勝ち残る「業務改善とIT活用によるコスト削減の具体策」というテーマで、情報システム会社が主催するセミナーが行われ、私が基調講演を行いました。

基調講演は「低コスト経営時代に求められる経営革新のあり方」と題して、経営環境の認識とその中で求められる経営革新の進め方、情報システムを活用した改革の進め方を講演しました。

以前、日経産業にマツダの開発効率をアップする手法として「競争力 エンジン役はIT」の記事がのっており、ますます、情報システムの活用が経営改善に必要になってきていると思います。今日はこの時の基調講演の内容を説明したいと思います。

リーマンショック以降、日本経済が不況になり、円高、株価低迷、総じて企業業績も悪化しました。特に基幹産業である自動車の国内生産台数減少、住宅着工の減少が顕著で内需拡大が難しく、東アジア(中国、韓国)、東南アジア、南アジア(インド)の新興国への外需の対応が必要になりました。
最近、企業の業績に明るい兆しが出始めましたが、これは、デフレ環境の中で企業が、中国、インドへの海外シフト、低価格商品の開発、EV、HEV等の革新商品の開発等、環境の変化に柔軟に適応した結果だと思います。

環境変化に適応した事例では日本電産ニトリマクドナルド、ユニクロコマツを取り上げました。
これらの企業の共通点は、「オフェンス(攻め)とディフェンス(守り)経営」の推進を進めている事です。

オフェンス(攻め)経営として顧客の創造を前提に売れる製品の開発、ディフェンス(守り)経営として固定費の低減、変動費の低減を進めています。

このオフェンス(攻め)とディフェンス(守り)経営を支援するツールとして情報システムがあります。オフェンス経営ではITを活用して新規顧客開拓、新製品開発、ディフェンス経営ではITを活用して業務プロセス改善を進めます。この業務プロセス改善の中身として、経営プロセス改善ではERP、開発プロセス改善ではPDM、生産プロセス改善ではSCM、販売プロセス改善ではSFA、この全てを包含したPLMがあり、これらの情報システムツールを活用して改革を進める事が現在の経営ではスピード、効率性、効果性を考えても重要です。

但し、ITを活用した業務プロセス改善の場合、IT導入と平行して業務改善を進める必要があります。ITツールを導入して、業務改善がなされなければ効果がでません。

業務改善は現状の仕事の内容について目的を追究し、その仕事が行われている要因を調べ、他と比較する事により問題点を抽出し、その問題点を解消する改善案を検討し、実施します。

以上が講演の要点ですが、このITを導入する場合の成功ポイントを説明します。

1.構想段階
・経営戦略上のIT導入の位置付け明確化する
2.企画段階
・IT導入の直接目的、目標明確化する
・事業特性、商品特性、生産特性に合ったIT導入範囲、導入方式の決定をする
3.構築段階
・業務改善とIT適応設計を平行して実施する
・優秀なSIベンダーの選択する
・パッケージシステムの場合はカスタマイズ、アドオンの最小化を目指す
4.導入段階
・システムに適応した組織変更の実施する
・徹底したシステム、データ精度検証をする
5.本番稼動段階
・ 早期問題抽出と前向きな対応策の検討を実施する

以上の各段階別に成功ポイントを考えながら、情報システムの構築が重要です。

経営で優位にすべきなのは

過去にアメリカで、トヨタのリコール問題が大きく取り上げられましたが、この問題で日本経済新聞に「トヨタリコール問題を聞く」と題して、米ペンシルベニア大ウォートン校准教授のラリー・ハービニアック氏と、米ミシガン大教授のジェフリー・ライカー氏のコメントが記載されていました。

ラリー・ハービニアック准教授は、この品質問題は品質を絶え間なく改善する「トヨタ文化」を世界の他の地域にうまく輸出できなかった結果ではないかと説いています。
品質より販売台数やコスト抑制が優先課題になっていなかったかと反省すべきだと話をしています。

一方のジェフリー・ライカー教授は、不具合はフロアマットやアクセルペダルの部品が主要な原因。また、プリウスは非常な複雑なブレーキ制御システムの中の1つのエラーだと説明し、この不具合でトヨタの技術力やモラルが低下している証拠はどこにもなく、この事でトヨタの経営や技術力を否定するような批判がでているのは非常に残念と説明しています。新聞、テレビの過剰ともいえる報道の結果、消費者の不安が想定を上回って高まっているとも話をしています。

二人の教授は正反対的な意見を述べていますが、私はジェフリー・ライカー教授のほうが適切な意見を述べているのではないかと思います。トヨタの問題を不具合発生そのものハード面と不具合発生時の対処方法のソフト面で考えてみます。

私もクライアント先の品質問題の解決を指導する場面が多々ありますが、大切な事は不具合が発生している現象と原因を正しく分析し、適切な改善策と今後の歯止めを実施する事、そして改善策を顧客に適切なタイミングで情報開示する事と思っています。

フロアマット不具合は、その要因が純正の全天候型フロアマットを固定せず使うと、マットが移動してアクセルペダルと干渉してアクセルペダルが全開になり戻らなくなる。アクセルペダル不具合は、アクセルペダル内部のフリクションレバー部が磨耗した状態で、この部分が結露するとアクセルの戻りが遅くなる。ブレーキ制御システム不具合は、低速で滑りやすい路面でABSが作動すると制動力の変化がおき、制動距離がドライバーの期待値より変化する。というような現象、原因が公開情報でわかります。

トヨタはセオリー通り、数百人の日本の技術陣を米国に送り、3現主義に基づいて記載したような現象、原因を確実に分析して暫定策、恒久対策を図ろうとしましたが、顧客の不安のほうが先に高まり、その対応を誤った結果としてトヨタバッシングになったのではないかと考えます。

製品そのものに対応するハード面の適切な処置と、顧客に対処するソフト面の処置がうまくリンクする必要があります。その観点から不具合が発生した場合は、現象・原因・対策の早い見極めと顧客への適切な情報開示が必要と思います。また、ハード面の改善策は信頼性工学でいわれる発生している現象を直接防ぐ対策と、故障が発生しても致命的な不具合にならないフェールセーフ的な対策が必要と考えます。この点ではトヨタは、この不具合でアクセルペダルが踏み込まれたまま戻らない異常が発生した場合は、ブレーキを踏めばとまれるシステムを、今後市場投入する全モデルに採用しました。

この品質問題を教訓として、他の日本企業も品質優位な経営を実行してほしいと思います

経営の仕方を変えるべきである

先日、リバース開発について、投稿をしましたが、

今日は第二段でサムソン電子の経営の特徴を説明したいと思います。


トップダウン型の意思決定による俊敏な経営
 携帯電話のように製品のモデル変更のサイクルが早くなり、強力なリーダーシップによるすばやい意思決定を実施している




②グローバルな各市場で戦略的なマーケティングを実施
 日本企業のように、日本市場の製品を海外市場に持ち込むのではなく、各国の市場を戦略的にマーケティングし、顧客ニーズに適合した製品企画、開発を実施している




③要素技術、先行開発の調達
 日本企業のように全て自前主義でこだわるのではなく、自社でできない、要素技術、先行開発内容については、グローバルに他社から調達をする




フォワード型設計ではなくリバース型設計推進
 全世界の他社の新製品を常に比較・解析し、機能、機構、仕様を見直し、顧客ニーズにあった量産開発を実施する




⑤グローバルに必要な人材の確保、育成
 グローバル展開できる人材を常に確保し、育成している。日本の技術者もこの人材戦略で確保し、日本の先端技術を調達している




いずれの内容も現在の日本の家電メーカにはない経営の仕方で、早急に、日本流の新たな経営の仕方を考え、実施する必要があると思います。

リバース開発という手法

先日、クライアント先の事業企画責任者が集まって、日本の家電メーカの敗北とサムソン電子の成功要因を議論します。


私はこの議論の中で、サムソン電子が活用しているリバース開発の説明をする予定になっています。


1993年の私がコンサルタントになって間もない頃、日本の自動車メーカが実施している「ティアダウン」という手法を指導しました。


この手法は他社の新製品をボルト一本まで徹底分解して、自社の製品と比較し、機能、方式、構造、性能、仕様等についてブラッシュアップするテーマを抽出します。このテーマを自社の新製品の製品企画、コストリダクションに活かします。


日本語でいうと「イイトコドリ」ですが、0から製品を企画開発するより、短いリードタイムで市場のニーズに適合した製品を開発することができます。


サムソン電子はこの手法を「リバース開発」として、活用し、グローバルな各市場に適合した製品を企画開発してきました。この結果が成功要因の1つと言われています。


日本の家電メーカも原点に戻り、この手法を活用して、要素技術、先行開発力の優位性を活かしながら、量産開発でサムソン電子に負けている部分を取り返す行動が必要と思います。


議論の内容は、次回に掲載いたします。